先端巨大症、下垂体機能低下症、成長ホルモン分泌不全症、クッシング病、プロラクチン産生腫瘍、尿崩症、副甲状腺機能低下症・亢進症、副腎皮質機能低下症、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、副腎偶発腫瘍、性腺機能低下症、月経異常、不妊症など 内分泌腫瘍として、甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、下垂体腫瘍、副甲状腺腫瘍など
脳下垂体は耳の穴を両側から中にたどってぶつかったところにあり、直径1cmの程度の大きさです。6つの大切なホルモン-成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン(2種類)、乳汁分泌ホルモン-が作られており、それぞれのホルモンの分泌の過剰あるいは低下によって症状が現れます。 これらの下垂体ホルモンの分泌異常は、脳下垂体や下垂体のすぐ上方にできる腫瘍などによって引き起こされることが多いのですが、原因が特定できないものや免疫の異常によって生じるものなどがあります。
尿崩症 Diabetes insipidusとんでもなく尿量が増える疾患です。腎臓の先天的な機能異常で生じるものもありますが、多くは脳下垂体の上にある抗利尿ホルモン産生細胞が破壊されて生じます。腫瘍や炎症、免疫異常などが原因です。冷たい水をたくさん飲みたくなり、尿量がとても多くなります。
副甲状腺疾患 Parathyroid diseasesカルシウムの代謝を仕切っているのが副甲状腺で作られる副甲状腺ホルモンです。副甲状腺は、小豆の粒ていどの大きさで、甲状腺の裏側に4つあるのが普通です。そこで産生される副甲状腺ホルモンには、血液の中のカルシウムの濃度を一定に調整する作用があります。副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される機能亢進症では高カルシウム血症となり、分泌されなくなる機能低下症では低カルシウム血症となります。
副腎疾患 Adrenal diseases腎臓のすぐ上のあたりに、左右1個ずつあります。大切な4つのホルモンを作っています。そのうちの一つであるアルドステロンの分泌過剰症は原発性アルドステロン症と呼ばれ、難治性高血圧の原因となるもので、高血圧の5%ていどにあると推定されています。 アドレナリンの分泌過剰症である褐色細胞腫や、コルチゾールと呼ばれる副腎皮質ホルモンの過剰であるクッシング症候群では、高血圧や糖尿病になります。 最近では、CTスキャンで偶然に副腎に腫瘍が見つかることが多くなりました。副腎腫瘍から過剰なホルモン分泌がないかどうか、調べる必要があります。
性腺疾患 Gonadal dysfunction精巣や卵巣の機能は、脳および脳下垂体からの調節を受けています。下垂体疾患などで脳からの指令が届かなくなると機能しなくなります。つまり、月経異常や不妊症になります。男性不妊も含め、原因を検査したうえで、状況に応じてホルモン治療を行います。
バセドウ病・橋本病・甲状腺腫瘍・亜急性/無痛性甲状腺炎・など
免疫力は、外敵に向かって発揮される防衛力ですが、ときとして自分自身の体の一部に向かって発揮されることがあります。バセドウ病や橋本病は、その異常な免疫反応のために起こる病気です。
バセドウ病は、免疫が甲状腺に向かって、「もっと働けよ」とちょっかいを出すために、甲状腺ホルモンが過剰となる疾患です。甲状腺ホルモンには体を活性化する作用があるため、過剰になると、座っていてもジョギングをしているような状態になります。脈が速くなったり、暑がりになったりします。早急に治療が必要です。
橋本病は、慢性甲状腺炎のうち、甲状腺が大きく腫れたものです。逆に甲状腺が小さく萎縮してしまうこともあります(萎縮性慢性甲状腺炎)。異常な免疫が甲状腺を攻撃するため、甲状腺ホルモンを産生できなくなります。そのため、活力が失われ、運動能力の低下、頭の回転が悪くなる、代謝が悪くなり髪や眉毛が抜けてきたり、心臓が弱くなったりします。ゆっくりと進行するので、甲状腺が腫れなければ気がつかれないことが多い疾患です。甲状腺ホルモンの補充療法を行います。 これらの疾患は、血縁者に多く発症するので、体質として遺伝する疾患です。
甲状腺腫瘍 Thyroid tumors甲状腺の腫瘍は、健診などで偶然に発見されることが多く、殆どが良性の疾患です。触ってみて、超音波検査をします。必要に応じて、細い注射針をさして吸引細胞診をします。
亜急性・無痛性甲状腺炎 Subacute/Painless thyroiditis亜急性甲状腺は、甲状腺に急性の炎症が生じ、特徴的な痛みがあるので、診断は比較的容易です。甲状腺が壊れて甲状腺ホルモンが血液に漏れ出すので、一時的にバセドウ病と同じような甲状腺ホルモン過剰の症状が出ます。 同じように甲状腺が破壊されるのですが、痛みのないものが無痛性甲状腺炎で、通常、慢性甲状腺炎がある人に起こります。
1型糖尿病・2型糖尿病・妊娠糖尿病・低血糖症・など
多くは異常な免疫反応によって膵臓のインスリンを作っているβ細胞が破壊されて生じる疾患です。発症の速度によって、劇症1型糖尿病、急性発症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病と呼ばれています。体から失われたインスリンを補うためにインスリン治療が絶対的に必要です。当院では、インスリンポンプ療法(CSII)も積極的に行っています。妊婦さんにはSAPを勧めています。
2型糖尿病 Type 2 diabetes体質的な要因に加えて、カロリーオーバーや運動不足などによって生じます。ほとんどの人で食後に血糖が上昇することから始まり、放置すると食前の血糖値も上昇してきます。動脈硬化を含む合併症が起こらないようにしなければなりません。また、高齢になったときに辛い思いをしなくてすむように、膵臓のβ細胞を酷使して過労死させないようにすることが大切です。
妊娠糖尿病 Gestational diabetes体質的に食後のインスリン分泌反応が弱いかあるいは遅れる人が妊娠するとなります。適切な食事指導によって問題を解決します。
低血糖Hypoglycemiaインスリン注射や血糖降下薬によって生じる低血糖のほかに低血糖を生じる病態があります。食後2-4時間で生じる反応性低血糖は糖尿病の初期の人に見られます。空腹時に生じる持続性の低血糖ではインスリン産生腫瘍(インスリノーマ)を疑います。ランダムに生じる低血糖では、免疫の異常によっておこるインスリン自己免疫症候群を疑います。
まずは家庭血圧を測定することから始まります。朝は起き抜けではなく、しばらくたってから測定し、夜はリラックスしている時間に測定します。その結果、高ければ治療を考慮しますが、その前に、高血圧となる原因疾患がないか検討します。とくに原発性アルドステロン症は高血圧の原因としての頻度が高い疾患です。
海から陸に上がった私たちの祖先は、塩の不足に悩みました。そこで、尿に塩分を無駄に流してしまわないようにするために、アルドステロンと呼ばれるホルモンを作るようになりました。アルドステロンは副腎で作られ、尿に塩が出ていかないようにする作用を持っています。副腎から病的にアルドステロンが過剰分泌される疾患が原発性アルドステロン症です。その結果、高血圧、動脈硬化、心不全などに陥ることがあります。高血圧症の5%程度はこの疾患です。
褐色細胞腫 Pheochromocytoma副腎では、アドレナリンが産生されます。精神的に緊張する場面や、低血糖などのストレス状態のときに、アドレナリンがたくさん分泌されます。その結果、血圧や血糖値が上昇します。このアドレナリンを産生する細胞が腫瘍化して、勝手にアドレナリンを過剰に産生する病気です。高血圧や糖尿病を招き、脳出血など生命に危険を及ぼします。
クッシング症候群副腎で産生され分泌されるホルモンであるコルチゾールは、生命維持に必須のホルモンであり、アドレナリンと同様にストレスに反応して分泌されます。コルチゾールを過剰に産生する副腎腫瘍ができると、糖尿病や高血圧を生じ、筋肉や皮膚が弱くなり、顔が赤く丸くなり、骨がもろくなります。治療をしないと死に至ります。
脂質代謝は複雑ですが、きちんと検査をして、適切な治療ができればよい結果となります。
コレステロールには、動脈硬化を進める悪玉 LDLコレステロールと、動脈硬化を抑制する善玉 HDLコレステロールがあります。LDLが低い方がよいのですが、中には遺伝的に高い家系もあって、その場合は積極的な治療が必要となります。
高中性脂肪血症 High triglyceride中性脂肪はよく健診で指摘されます。中性脂肪そのものは動脈硬化をもたらすことはありませんが、中性脂肪の高い人は、悪玉コレステロールの中でも超悪玉が増えていることが分かっています。中性脂肪が上がり過ぎないようにするために、油ものを続けて食べないようにすることが大切です。